宇宙機ミッションの紹介

私が現在関わっている(関わってきた)宇宙機ミッションについて、簡単にご紹介します。

 Comet Interceptor

JAXA・ESAが主導している世界初の長周期彗星探査機です。2029年に打ち上げ予定です。周期数千年以上の長周期彗星に行くためには、発見してすぐに探査機を向かわせる必要があるため、対象天体を決定してから探査機を開発しても間に合いません。本ミッションでは、打ち上げた探査機を太陽-地球系の第2ラグランジュ点 (SEL2) にしばらく待機させておき、条件の良い彗星が来たら探査機の軌道を彗星に向けて変更します。彗星に近づく際には、彗星核への近接観測と、彗星から噴出するダストとの衝突の危険性回避を両立するために、子機を2機分離して近接観測を行います。
私は子機の1つに搭載される水素大気観測カメラ(Hydrogen Imager)のチームの一員として、光学系の設計ガスフィルターの性能評価実験既存の彗星大気観測データの解析彗星大気のシミュレーション開発等を行っています。博士論文のうち2章がComet Interceptor搭載装置の設計開発および観測の実現可能性の評価に関する内容です (Suzuki et al., in prep.; Suzuki et al., in prep.)。

 BepiColombo(みお・MPO)

JAXA・ESAが主導している水星探査機です。2018年に打ち上げられ、2025年に水星周回軌道に投入される予定です。JAXAが主導するMMO (みお) とESAが主導するMPOの2機で構成されています。MPOは水星表面に比較的近い軌道を周回して主に水星表面・大気を、MMOは比較的高高度を周回して主に水星大気・プラズマ環境を観測します。
私はNa大気観測カメラ(MSASI)のチームの一員として、スペア品を用いたノイズ量の評価実験既存の水星探査データの解析水星大気のシミュレーション開発等を行っています。修士論文のうち1章がBepiColomboによる模擬観測データの作成に関する内容です (Murakami et al., in prep.)。また、PDではMPO搭載紫外線分光器 (PHEBUS) のチームの一員として、水星スイングバイ中の観測データの解析を行っています (Suzuki et al., in prep.)。

 ひさき

JAXAが主導している太陽系内に特化した紫外線宇宙望遠鏡です。2013年に打ち上げられ、現在も観測を行っています。
私は彗星大気の観測データの解析を行っています。火星の観測データの解析に少しだけ関わったこともあります (Masunaga et al., 2022, Nat. Comm.)。博士論文のうち2章がひさき衛星のデータ解析結果に関する内容です (Suzuki et al., in prep.)。

 MESSENGER

NASAが主導した水星探査機です。2004年に打ち上げられ、2011年から2015年まで17水星年に亘って観測を行いました。
私は大気観測カメラ(MASCS)および表面観測カメラ(XRS)のデータ解析を通して、Na大気量の季節変動性の要因の研究や、大気分布と表面組成分布の間の相関関係に関する研究行いました。修士論文・博士論文のそれぞれ1章ずつがMESSENGER探査機のデータ解析結果に関する内容です (Suzuki et al., 2020. JGR., Suzuki et al., 2023. EPS.)。

 (某紫外線宇宙望遠鏡計画)

紫外線分光により太陽系内の天体から系外惑星、恒星、銀河まで様々な天体を観測する計画です。
私は地球型惑星 (金星・火星)彗星および地球高層大気 (ジオコロナ)の定量的検討チームに参加しています。現在計画進行中……お楽しみに!

 EQUULEUS

JAXA・東京大学が主導している超小型月探査機です。2022年11月に打ち上げられ、月および地球の観測を行いました。
私はHe+大気観測カメラ(PHOENIX)のチームの一員として、温度変化への耐性の評価実験等を行いました。

 はやぶさ2

JAXAが主導している小惑星探査機です。2014年に打ち上げられ、2018年から2019年まで小惑星リュウグウの観測およびサンプルの採取を行いました。そして一度地球にサンプルを届けた後、別の小惑星に向けて再び地球を発ちました。
私はリュウグウを含む沢山のC型小惑星の地上観測データの解析を行い、リュウグウの辿ってきた歴史を考察しました。卒業研究のほぼ全ての内容がリュウグウの地上観測データの解析に関する内容です (Sugita et al., 2019, Science.)。